プレイヤーがそれぞれの音を手元で調整できるようにキュー・ボックスが設置されているレコーディングスタジオが多いです。
これは、2ミックスで送っている基本のバランスに対して、自分の楽器や他の楽器が足りないといったときに、それぞれの楽器のボリュームを上げるようにして使います。レコーディングに慣れていないプレイヤーの場合は最初に軽く説明をしてあげるようにするとよいでしょう。
基本のバランスはパンとフェーダーで作っていきますが、演奏の内容に応じてEQやコンプレッサーを使うことも多いです。
モニター音にだけエフェクターをかけてあげることで、レコーディングをしている音を後で調整することができます。
オーディオインターフェースにそういった機能がついていれば、積極的に活用をしていきましょう。
モニター音のバランスと演奏は密接につながっています。
モニター音が大きいとプレイヤーが感じている時には、演奏は小さくなり、モニター音が小さいと感じる時には演奏は大きくなっていくからです。
例えば、静かなウィスパーボイスを録音したいにも関わらず、返しているモニターの音が小さいのは無理があります。
そのため、どういったニュアンスを録音したいかに応じて、モニターのバランスを変えてあげるようすると、結果として良い演奏をしてもらうことができるはずです。
1万円のものから80万円のものまで、値段に大きな振れ幅のあるマイクプリアンプ。一体何がそんなに違うのか。どうやって選べば良いのか。
その特徴について解説をしていきたいと思います。
マイクプリアンプは、マイクの信号を増幅するための機械です。
増幅幅は20dbで10倍、60dbで1000倍にもなります。
ここにこだわる人が多いのは、マイクプリアンプはマイクの種類の次に音を決めるための大きな要素だからです。
意外とクリエイターの方に聞かれることが多いのが、マイクプリアンプの接続方法です。マイクプリアンプは大抵、XLR端子がアウトプットになっていますが、そのままインターフェイスのXLR端子に繋いでしまうと、マイクプリアンプを二重に通すことになってしまいます。
ある程度の価格帯から、内臓のマイクプリアンプをOFFにすることができたり、XLRをラインレベルで受けることができるようになるのですが、10万円以下の価格帯の場合はXLR→TRSのケーブルで接続する必要があります。
外付けのマイクプリアンプを買ったけれど、
「何故か音割れしてしまう」
「内臓マイクプリアンプの方が音がいい」
と感じる場合には、接続方法を見直してみるとよいでしょう。
ときどき、精一杯マイクプリアンプでブーストをしている人をみかけますが、現代の24bitデジタルレコーディングでは、そこまでゲインもレベルも無理にあげる必要はありません。まずは過大入力で歪まない音にセットすることが基本になります。その上で、エフェクター的にマイクプリアンプを使いたい場合のみ、ゲインをあげ、出力レベルを下げて、マイクプリアンプをドライブさせてみましょう。
だいたいの適正音量は-20dbから大きくても-12db程度だと考えています。
このレベルであれば、後で別のアナログエフェクターを通すときにも問題ない音量の大きさだからです。
マイクプリアンプの違いについて聴き分けるためには、実際に自分で試してみるほかありません。
友達を連れて行って、自分の普段使っているマイクとオーディオインターフェースを持って楽器屋に行ってみるのが一番良いと思います。
演奏してもらってる間に同じマイクで違いを聴き比べたり、実際に録音をしてみて違いを一緒に確認してもらったりできるからです。
どうしても、自分の買い物となると価格が先入観として刷り込まれてしまいますが、実際に録音したものを友人に前情報を一切伏せて選んでもらうと意外な結果に終わることも多いかもしれません。
同じ演奏、同じマイクで、マイクプリアンプだけを切り変えてみると、ニュアンスがガラッと変わるのが確認できます。
例えるなら、
カメラ本体がマイク。写真のフィルムがマイクプリアンプといった具合でしょうか。
フィルムにこだわることで、質感をコントロールできるところに面白さがあるのです。
どのメーカーが優れているというよりは、殆ど好みの問題なので、これだ!と感じたモノを愛用する方が、周りの評判に左右されるよりも納得する仕上がりになりやすいと思います。
とはいえ、何も例がないとわかりにくいと思いますので、僕が感じた使ったことのあるマイクプリアンプの特徴を書いておきます。
セルフレコーディングで機材をレンタルするときやレコーディングをするときに参考にしていただければ嬉しいです。
何より、ご自身で違いを体感してみてください。
年代や状態よってサウンドが大きく変わりますが、基本的には腰の据わった音が特徴的です。どの楽器を録音してもウルサイ音にはならないので、ファーストチョイスになることが多いプリアンプです。オーディオインターフェースに付属しているマイクプリアンプはHifi傾向が強いので、比べると温かさを感じるかもしれません。
リイシューものやビンテージものなど様々ありますが、同じ音を目指しているはずなのにまるで傾向が違ったりもします笑
ローからハイまでスッキリ、クッキリと音を録ることができるマイクプリアンプです。カラッとした清涼感のあるサウンドが特徴的で、張り付き感のある派手な音です。激しい音をうまくデフォルメをしてくれるような感覚があります。日本だと過小評価をされていますが、海外ではNeveと同じようにファーストチョイスになることが多いマイクプリアンプです。
明るめで、芯のある音を録ることができるマイクプリアンプ。サックスやボーカルなど主役になる音源に使うことで、無理にEQをしなくてもどっしりと中央にいてくれるような音を録ることができます。価格帯もそこまで高くはないので、初めて買う歌録り用のマイクプリアンプとしてはオススメです。真空管特有のブライトさがありますね。
クリーンな音を持っているマイクプリアンプ。インターフェイスについているマイクプリアンプで音が曇って聞こえてしまうときには、こちらに変えると、劇的な変化を体感できるかもしれません。音の細部まで録音できるので、どのソースであってもとりあえず使うことができると思います。お値段もお手頃ですし、最初に買ってみるモノとしてはオススメです。
艶のあるクリーンな音が特徴的で、ミックス時にぐっと前に出てくる音で録音をすることができます。高級感のある音や、上品さを演出したいときに使うとうまくイメージに合うことが多いです。音を聞いてみると、JPOPのあの音だ!とピンとくるのではないかと思います。EQもコンプもついていて非常に使いやすいです。
これ自体はインターフェイスですが、高品質なマイクプリアンプを搭載していて、モバイルレコーディングで重宝をしています。NeveやAPIのような色付けは感じられないもののしっかりとしたガッツがあります。大きな荷物を持ち運べないときに単体機と大きく差がないクオリティーのものをレコーディングできるので、インターフェイスから探している方にはオススメできます。
上記はあくまでも一例ではありますが、このようにメーカーや機種によって大きく特徴が異なります。
具体例をいくつか挙げておきます。
ガツンとくるようなロックギターを録音したい→ギラッとした張り付き感のある音がいいかな→APIのキャラクターが合いそうだ
歌と溶け込んでいくようなアコースティックギターを録音したい→歌の邪魔をしないまろやかな音がいいかな→Neveで柔らかい音を録音しておこう
激しいオケに負けないボーカルを録音したい→ボーカルを抜けさせるならクリーンな音がいいかな→ISA oneでクリアにとっておこう
といった具合で現場に合わせて判断しています。
影響力でいえば、
演奏>マイクを置く場所>マイクの種類>マイクプリアンプ>インタフェース
なので、最初からこだわりすぎる必要はありません。
押さえておきたいポイントは
・味付けのバリエーションとしてマイクプリアンプがあること。
・スキルアップをしたときに無視できない要素であること。
の2点です。
これさえ理解しておくようにすれば、後々大きな手助けになるはずです。
「演奏も非常に良いし、しっかりとした音が良くレコーディングできていると思う。でも、何かが足りない気がする……。」
そう感じたときには、マイクプリアンプを変えてみることで、大きな変化を楽しむことができるでしょう。
]]>レコーディングした音が
「ギラギラしすぎて耳が痛い。」
「こもってしまっていて使いにくい。」
そう感じたことはありませんか?
うまく思い通りの音がレコーディングできないときには、マイクの種類を思いきって変えてみると理想の音に近づけるかもしれません。
例えば、ボーカルをコンデンサーマイクで録音していたものを、ダイナミックマイクやリボンマイクに変えてみることで、狙い通りの音がレコーディングできるというのは普通にあり得る話です。
ボーカルにコンデンサーマイクというのは定番の組み合わせではありますが、それがどんなときでも正解だとは限りません。
定番にとらわれずに色々な組み合わせ方を試してみることが大切です。
コンデンサーマイクに比べるとレンジが限られている分、温かみやパンチのある音が特徴です。
大音量を録音しても歪みません。
周囲の雑音に強く、頑丈に作られています。
高域が強い音に使うと扱いやすい音で録音することができます。
低域から、高域まで広いレンジで録音ができます。
ラージダイアフラムのものとスモールダイアフラムのもので、それぞれ特徴があります。
48Vの電源を供給することで、音を拾えるようになります。
大音量には弱く、歪んでしまうことがあります。
低域に強く、高域が柔らかくなります。
また、感度が高く、小さな音もしっかりと集音できます。
ラージダイアフラムと比べると大音量に強いです。
低域から高域までシャープに録音できます。
また、感度が低く、音量差をはっきりと録音することができます。
ダイナミックマイクと同じように、レンジの狭い音が特徴です。
鋭い音であったとしても柔らかい音でレコーディングすることができます。
ノイズに弱く、大きな音量にも弱いので、使いこなしにコツがいりますが、リボンマイクでしか出せない音があり、近年人気が出てきています。
耐久性や音量に弱いところを補強したモデルや、コンデンサーマイクのように電源を供給することで、レンジを広くしたモデルが発売されています。
デジタルレコーディングでは、テープレコーディングの時代はちょうど良く高音が落ちていた場所が、そのまま録音できてしまいます。そのため、高音が強い楽器に対してコンデンサーマイクを利用してしまうと、高音をしっかりとレコーディングできすぎてしまい、耳に痛い音になってしまうことがあります。
もちろん、マイクにもいろいろな製品が出ていて、それぞれの特徴が大いにあるので、ケースバイケースです。
ただ、以前の定番マイクがそのままの方法で応用できるかというと、そこは疑っておくほうが良い結果につながると思います。
例えばドラムを録音するときに、僕の場合はこう考えています。
鋭い音→そのまま録音するときつい音になりそうだ→リボンマイク、ラージダイアフラムコンデンサーマイク
場所によって音が違う→後でアタックが足りないとき用に、アタックをしっかり録音しておきたい→ダイナミックマイク
場所によって音が違う→アタックとふくよかな音、鳴っている音が録音したい。→ビーターの近くにダイナミックマイク、キックの表にラージダイアフラムコンデンサーマイク、バランス良く聞こえるところにリボンマイク
キックとスネアがハッキリと聞こえる場所を探す→その場で鳴っている音をしっかりと捉えたい→スモールダイアフラムコンデンサーマイク
といった感じで考えています。
実際の音を耳で聞く。
↓
どういった音で録音したいかをイメージする。
↓
マイクの種類を決めて、マイクを立てていく。
↓
実際にレコーディングされた音を聞いて、イメージと大きく違っていないか確認する。
上記の流れを繰り返し行うことで、だんだんと自分だけの定番をつくっていくことができるはずです。
マイクの種類を変えると、根本的に録音している音が変わります。
「何か違う……。」と感じたときには先入観にとらわれずに、マイクの種類を変えてみると面白い発見があるはずですよ。
音楽制作をはじめたばかりの方から、音楽業界で既にご活躍の方まで
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「あれっ?」というのは大切な感覚だと思う。
何かが違う、でも何が違うのかがわからない。
きっと、初めてレコーディングをした時の体験ってそんなもんじゃないだろうか。
少なくても、僕はそうだった。
「どうしたらうまくいくか」を考えることはつまり、「どうしたら違和感を覚えずにすむのだろうか」を考えること似ているのかもしれない。
僕がレコーディングにハマった理由。
それは結局のところ、「え、CDってこんな音じゃないけど!?」という疑問だったように思う。
・初めてのレコーディング
僕が初めてレコーディングを経験したのは、大学1年生の冬のことだった。
ライブができる合宿所で、オーナーが趣味と実益を兼ねてレコーディングのサービスをやっていたのだ。
といっても、無料で対応してもらえる範囲なので、いわゆるリハスタ一発録り。
レコーディングと聞いて頭に浮かぶあの風景ではない。
自分の持ち時間になると、8畳ぐらいのスペースで「せーの」でレコーディングをする。
ボーカルマイクはAudixのダイナミックマイクだった。
ブースも分かれていないし、マイクもリハーサルで使っているものを適当に使う超簡易的なレコーディングだったけれど、皆真剣にのぞんでいた。
前日、徹夜で練習する人もいれば、 緊張でうまくご飯が食べられない人もいた。
レコーディングはそれだけ未知の体験で。 普段からライブをやっていた僕らでも、ピリッとした空気が流れていた。
例外なく、僕も一生懸命練習してレコーディングに臨んだ。
自分にとってのベストは尽くしたつもりだった。
けれど、感想は
「いつもと自分の声が違う・・?」
というモノだった。
・「あれ、僕ってこんな声だっけ?」からはじまったレコーディングへの道
僕が違和感を覚えたのは、まずはその音質。
普段からリハーサルやライブをフィールドレコーダーで録音をしていたのだけれど、その音とあまりにかけ離れていた。
「なんか篭っている気がする・・・。」
それが率直な感想だった。
フィールドレコーダーの方がずっと生々しくいい音で録音できているのに、なぜかマイクを通してレコーディングをすると鮮度が失われてしまっている。
ご飯を抜いて気合を入れて挑んだのでちょっと悲しかった。
でも、そこから、「どうしたらいい声で録れたのか?」という疑問が頭から離れず、好奇心の扉が開いた。
・マイクの種類を変えてみた
調べて行くうちに、マイクには2種類あることがわかった。
ダイナミックマイクと、コンデンサーマイクだ。
普段自分が使っているマイクはダイナミックマイクというもので、レコーディングで使うものはコンデンサーマイクと呼ばれているものらしい。
自分が使っているフィールドレコーダーはコンデンサーマイクだから、コンデンサーマイクなら間違いない。
種類さえ同じなら、きっと同じように録れるはず。
そう期待を込めて買ったのが、MXLの入門用のコンデンサーマイクだった。
しかし、予想に反していざ使ってみると大変なことばかり。
まず、ノイズを拾いすぎてしまって声だけをうまく録ることができない。
さらに録音した声に音量差がありすぎて、全然CDと違う。
音がペラペラとした感覚がある。
なけなしの貯金を使って買ったので相当ショックだった。
「どういうことなんだー!」
「なんでこのマイク、こんな高評価なんだろう?」
と、ちょっとした敗北感を味わった。
当時はどうして高価なマイクが存在しているのか。
MXLのマイクがいかにコストパフォーマンスに優れているのか。
何もわからなかった笑
・マイクまでの距離で全然声が変わってしまう発見
しばらく試行錯誤を繰り返すうちに、マイクまでの距離によって声がまるで違うことに気がついた。
少し離れてみた方がレンジが広く録れることがわかるようになり、段々と自分の声にとってどのぐらいの距離で録音をするのがいいのかがわかるようになってきた。
同じマイクでも、全く違う音で録れてしまう。
悪かったのはマイクや機材じゃなくて、自分の録りかたなんじゃないのかと、色々な距離から声を録音して実験をしていた。
同時にどうしてCDのボーカルの音がこんなに耳触りがいいのか、こんなに歌詞が聞き取りやすいのかを疑問が湧いて出てくる。
そうか、プロの現場ではノイマンというマイクが使われているのか。
あのCDでは真空管マイクを使っているな。
どうしてマイクっていろんな形があるんだろう。
好奇心がそこに向いたときには、もう新しいマイクが欲しくなっていた。
すっかり、サンレコの読者にもなっていた笑。
・初めての本格マイク LautenAudio Horizon
僕がレコーディングにハマって行ったのは、LautenAudio Horizonとの出会いが決定的だったように思う。
Horizonは十分なプロスペックで使える10万円ぐらいの真空管コンデンサーマイクで、U67っぽい音がするということで、一時期レコーディングエンジニアの間でよく話題になったマイク。
当時の僕にはU67っぽいという意味はよくわからなかった。
けれど、色々なプロデューサーがオススメしていたり、雑誌の前評判がよかったたりしたことから期待に胸を膨らませていた。
実際、楽器屋で試してみて、これが大正解だった。
今まで使っていたマイクと比べて全然ノイジーではなく
音量もしっかり出るのに耳に痛くない。
何より初めてCDっぽい音で自分の声を録音できた。
今まで使ってきたマイクとの根本的なスペックの違いに愕然としながら、いい音で録音できることの楽しさに感動をした。
・面白さと違和感の反復横跳びを繰り返す。
それから僕の興味の変遷は、マイクの機種の違い、マイクプリアンプの違い、コンプレッサーの違いとどんどんと変わっていった。
新しいことを試すたびに、
「ああ、これが足りなかったのか!」という面白さと
「え?これってなんかチガウ。」を発見していった。
僕はキャリアから見るとレコーディングエンジニアというよりもどちらかといえばマスタリングエンジニアなんだけれど、今でもレコーディングは好きだ。
行った事のない現場で、初めてのマイクで、初めてのアーティストを録音するとき。
予想した音とどう違うのか、耳を傾ける。
それを優しく修正する。
結局のところ、それが全てであるようにさえ思う。
よく、レコーディングを始めたばかりの方や、作曲志望で録音そのものに「あんまり詳しくないから・・・」と謙遜されている方の感覚の鋭さにビックリさせられることがある。
というのも、実際にCDになっている音との違いに対して、プロセスを知らないぶん敏感だからだ。
それが、だんだんと工程を理屈で理解するようになり、機材についての知識を深めていくにつれて、自分の作っている音がどうなのか、客観視できなくなってくる。
早い話、「これだけやっているんだから・・・」と色眼鏡をかけてしまいがちになってしまう笑
そういうバイアス無しに判断できるというのは、初心者ならではの強さだと僕は思う。
必ずしも経験が味方をしてくれるとは限らないのも、面白いところだ。
初心者だからと萎縮する必要は全くなくて、感じたことを素直に受け止めればそれが一番正解に近いはず。
もし、DTMや宅録を続ける中で、何か「あれっ?」と思うことがあれば。
それは、自分の感覚に素直になれているということだと思う。
自信を持って、違うと感じる原因が何なのか、考えていこう。
大抵、そこには新しい発見が待ってるはずだ。
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ここで作ったバランスはいわば、ミックスの下書きになります。
絵の場合はうまく下書きがかければ、あとはなぞるだけで作品が出来上っていきますが、それはミックスでも同じこと。
何もエフェクトを使わないシンプルな状態で良いバランスづくりができれば、それだけ仕上がりも良くなっていきます。
シンプルにパンとフェーダーだけでバランスをとろうとすると、場所によっては小さすぎたり大きすぎたりする場所がでてきてしまいます。
そんなときには二通り対処方法があります。当たり前のようにやっていることかとは思いますが、ここでは改めてその方法をおさらいしておきましょう。
・イベントのゲインを調整する
イベントを切り分けて、ゲインでそもそもの音量を調整する方法です。これは気軽に作業を進めていくことができ、チャンネルも増えないのがメリットです。ただ、一方ではフェーダー前のゲインで調整をしてしまうので、同じエフェクトを掛けていてもかかり方が変わってしまいます。
・フェーダーでオートメーションを書く
これは最もフレキシブルに調整をすることができる方法です。エフェクトのかけ方を一定にしながら、フェーダーでバランスをとっていくことができます。その場その場での音量を調整していくことで、音量の変化をフェーダーで書いていくということです。
ただし、他のパートの音色や音量が変わってしまうと調整をし直す必要がでてきます。
なので、最初にどの音に対して、どう聞かせたいかを設計図をみながら設定していくことが大切です。
例:キックに対してベースが手前など
この二つを組み合わせて、その場の判断で大きい、あるいは小さいと感じたものを調整してみましょう。
大まかな使い分けのポイントとしては、
・そのパート、あるいはシーン丸ごとのざっくりとした音量感→ゲインでの調整
・細かい調整が必要な部分→フェーダーのオートメーション
で対応をすると、煩雑にならない範囲でバランスをとっていくことができるように感じています。
ある程度バランスをとった後は、全体のミックスのボリュームを調整していきます。
マスターフェーダーを除くチャンネルをすべて選択して、フェーダーをまとめて調整をして、全体の音量を調整していきましょう。
目安としては、マスターフェーダーの音量が-12から-8DBFSあたりの音量バランスを目指すとよいでしょう。
もしVUメーターのプラグインや機能があるDAWを使っていれば、マスターチャンネルに-12DBにキャリブレーションしたVUメーターを利用して、大体針が0VUを行ったりきたりする程度にすると丁度いい音量感でしあげることができるはずです。
このぐらいの音量感だと、普段聞いているCDや音源の音量と比べると小さい音に感じるはずです。音量が小さすぎると感じた時には、DAWのフェーダーを上げるのではなくて、スピーカーの音量のほうを大きくしていくようにしましょう。そうしておけば、過剰にエフェクターを使うことを防ぐことができるのです。
ミックス全体の音量を調整した後に、楽器ごとにミックスバスを組んでいきましょう。バスは複数のチャンネルをまとめて一つのチャンネルにする機能のことです。
この機能を使って、楽器ごとにミックスバスを組んでおくことで、楽器にまとめてエフェクトをかけたり、ボリュームを調整したりすることができます。
特に、ドラムやコーラス、ピアノのような複数のチャンネルがたくさんあるようなパートについては、あらかじめバスにまとめておくようにしましょう。
この段階では、まだ先にバスをまとめておくというだけで、エフェクトやミックスバスのフェーダーを触る必要はありません。あくまでもミックスの下準備としてまとめておくといった意味合いです。
おおむねここまで出来ていれば、下書きとしてのミックスは完成しているといえるポイントを書いておきます。ぜひ、参考にしてみてください。
・エフェクトを使わなくても音楽として成立している
・埋もれてしまって聞こえないパートが無い
・全体を通じてマスターチャンネルがクリッピングをすることが無い(0DBFSを超えていない)
・音量が小さいと感じたときは、モニタースピーカーの音量を上げるようにしましょう。
・パンとフェーダーだけで、完成系がイメージできれば下書きとしてはOKです。
・全体の音量はミックスバスを組み込む前に調整しましょう。組み込んだ後にフェーダー全体を下げると、ミックスバランスが大きく変わってしまいます。
]]>
ここで注意して聞きたいポイントは、以下のとおりです。
→低域が強く聞こえてしまっていないか確認します。
→あまりに普段と違って聞こえる場合は、スピーカーの位置を調整します。
→高域がどう聞こえるかを確認してスピーカーのクセを掴みます。
→ヘッドフォンとの差からスピーカーのクセを掴みます。
ただ、実際のところそういった部分を意識だけで補うのはなかなか経験がいることなので、もしできれば、自分の普段使っているスピーカーやヘッドフォンをそのまま持ってきてしまったほうがラクかもしれません。
実際、色々な現場に足を運ぶエンジニアは、モニタースピーカーを持参していることが多いです。
最低限、普段使っているヘッドフォンを持っていくようにすることで、いつもの音と違和感なくレコーディングをすることができるようになります。そのため、例えスタジオに常設してあるようなヘッドフォンを普段から使っていたとしても、自分のヘッドフォンを持参するようにするとよいでしょう。
]]>
「アナログにすると高域が音痩せしてしまうのですが、どうやって対処をしていますか?」
僕流の解決策は、結論を先に書いてしまうと
「ラインケーブルを見直す」
ということです。
僕も良いコンバーターを揃えて、機材もマスタリングクラスのものを使っているのに、高域がロールオフしてしまうことに悩んでいたことがありました。
ですから、質問をいただいた方の気持ちはすごく良くわかります。
高価な機材を買っているのに原音が変わってしまうのはやはりショックですよね笑
アナログの音痩せ対策については色々な流派があると思うのですが、ここでは僕なりの解決方法をシェアできればと思います。
(若干宣伝こみです笑)
音が変わってしまう要素を順番におって考えてみましょう。
あくまでも僕の経験でのお話ですが、
AD/DA(オーディオインターフェース)部分だけで高域がロールオフしてしまうケースは稀だと思います。
僕は新しいAD/DAの導入するときには、AD/DAの性能を測るために、再生して録音を繰り返すループバックテストをやります。
だいたい、5回ループバックをしてみるとわかってくるのが、いわゆるAD/DAの音質の劣化というのはレンジではなく、時間軸や音の鮮度の部分の変化に現れやすいと言うことです。
ちょっと曖昧な表現にはなってしまうのですが、演奏がグニャグニャした感じになってしまったり、奥行きがなくなってしまったり、するのが、繰り返しAD/DAをすることの弱点であるように感じます。
よくAnalogue Warmthといった表現を見かけますが、
本来のアナログレコーディング機器自体は非常にハイファイです。
原音をちゃんとハイファイに録音、再生できるからこその専門機器だと言えます。
良く言うアナログの暖かさは、高域がロールオフしているというより、低域からうまく倍音がのっていてファットに聞こえるようになり、サチュレーションした結果レンジが埋まっていることをさすように感じます。
例外として、ビンテージ機器は使われているパーツが古いがゆえに本当に高域がロールオフしてしまっていることがあります。
これを暖かさと表現するのは確かに感覚的にはよくわかる話なのですが、それはあくまでも例外です。
名機と呼ばれる古いレコーディング機器たちも、他のアウトボードと比べてハイファイだったからこそ高く評価をされています。
ですから、アウトボードのせいで音が痩せてしまうといったことは基本的には考えにくい話であるように思います。
つまり、アナログだから丸い音になるのか?というのは、本当はそうではない可能性が高いように感じます。
コンバーターでも、機材でも無いとすると、あり得る要素としては、電源とラインケーブルの二種類に絞られます。
電源については、100vを引き込んでいる状況ですと、電源ケーブルでおおいにサウンドは変化をしていきます。
ただ、これについてはどれぐらい変わるかが各々の環境次第になってきてしまうので、一旦おいておくことにします。
ちょうど手元にあるケーブルをそれぞれ試してみます。
自身がケーブルの代理店をやっていることもあるので、社名と型番は敢えて伏せますが、A/Bテストの結果、僕はRMC01を基本的なラインケーブルに、RMC-S01をレコーディング用に採用しています。
(もう一つの定番のM社はたまたま今手元に同じ長さのペアがありませんでした汗 誰か貸してくださいな・・!)
他のケーブルの具体的なモデル名を知りたい方はメッセージやリプライをいただければダイレクトメッセージでこっそりお伝えします。
音源はサンプル販売サイトで購入したロイヤリティーフリーのものを利用しています。
まずは、こちらが基準になるもので、 AD/DAを一切していないモノです。
ここからどのように変わったか?がケーブルの性質を表すということになります。
DL可能にしてありますので、是非もともとのwavファイルで比較をしてみてください笑
mp3だとそんな変わらない?と思うものが、結構大きな変化だと感じられると思います。
ぐっと重心が下がって、高域のブライトさが抑えられたように聞こえます。
ベースとキックが前に出てきた印象、ですかね。
全体的に大人しさを感じます。
バランスの良い音だと思います。やはりハイが大人しくなる傾向ですが、うまくファットになっています。
流石定番なだけあって、耳なじみの良さというか、安心感のある知っている音がしますね。
2芯ケーブルに比べると、立体表現が優れているように思います。
ちょっとマットな音質ですね。これもよくスタジオで見かけるケーブルです。
ピアノのサンプルには合っている感じがします。割とエフェクター的要素が強い感じも?
今回、最高価格のケーブルです。
ハイがわかりやすく強調されていますね。
音量が上がり、納得の音場表現かな、と思います。
若者向きっぽい音、元気いっぱいという感じです。
スピード感があり、フルレンジが出ているように思います。
定位感が良い感じに溶け合っていて気持ち良いです。
トランジェントが立っている分、ピアノの音が刺さる瞬間もあります。
耳障りが非常に良いですね。柔らかいけど、ブライトです。
特有の色気感、みたいなものがあります。
ピアノの臨場感が素晴らしいです。
利用ソフト:Studio ONE 3.5
AD/DAコンバーター:Antelope Eclipse 384(with 10M clock)
プレイリストはこちら
このように、ケーブルによって高域、音量感がまるで変わってくるのがお分かりいただけるかと思います。
ケーブルは何がフラットなのか、味付けがないと言うのはどう言うことなのか、がよくディスカッションされるポイントですが、思うに味付けのないケーブルなど存在しないと言うのが僕の意見です。
だからこそ、どのケーブルが好みなのかを選んでみる必要があります。
僕はケーブルを買ったときに、似たようなテストをして、結果RMC-01のファストで機動力のある音とRMC-S01の柔らかい音をシステムに採用することにしました。
ぜひ、自分のセンスに合うラインケーブルを選んでいただきたいと思います。
個人的には、業界標準の安心感みたいなのって、実際ちょうど良いオトシドコロなのはよくわかるのですが、それを100パーセント信じてしまうのは如何なものか、とも感じています。
標準よりちょっと外れたところに、自分なりのこだわりや個性ってあらわれるものじゃないでしょうか。
前評判を気にする事なく、自分の感覚で選ぶことが何より大切だと僕は思います。
経験則から、以下の順番でトラブルシューティングをしていくのが良いでしょう。
機材にレベルを入れすぎて飽和していないか>ラインケーブル>電源ケーブル>AD/DAコンバーターの質>機材の不調(真空管系)
お力になれていれば、嬉しいです!
エンジニアリングについてご質問があればTwitterやFB上からぜひ、お気軽にDMください!
記事を企画いたします。
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今回ご紹介したReference Laboratoryのケーブルはこちらからお買い求めいただけます。
RMC01
RMCS-01
]]>「コンデンサーマイク貸して!」
「扱い方ちゃんとわかってる?」
「調べるので大丈夫。」
「うーむ・・(本当に大丈夫・・なのか・・?)」
なぜ貸し渋ったのかというと、
コンデンサーマイクは使い方を間違えるとすぐ壊れてしまうからです。
そこで、コンデンサーマイクの正しい取り扱い方を記事にしておきたいと思います。
コンデンサーマイクは、確かに繊細ですが、使い方を知れば、怖くありません!
以下、順番に、接続方法です。
ファンタム電源は大体、48vという表記が多いです。
コンデンサーマイクは大体、ショックマウントがついています。
先にショックマウントをマイクスタンドにとりつけてから、その後マイクをとりつけます。
色々なタイプがありますが、上記写真のようなタイプの場合は、
取り付けるときはマイクをひねってつけるのではなくて、ショックマウントの低面にあるノブをひねります。
マイクプリアンプ---XLRケーブル---コンデンサーマイクの接続順です。
また、ゲインを適正音量まで上げます。
※ゲインの使い方については色々な使い方があります。
最近のマイクはゲインを稼がなくてももともと大きな音のマイクが多いので、そんなときはPAD機能(音量をおさえる機能)を使ってゲインをあげてつかってます。
ある程度マイクプリのゲインをあげると、そのマイクプリ特有の癖がでてきます。
※真空管マイクはファンタムは基本不要です。またリボンマイクはマイクによって必要かどうかが変わってきます。
以上です。
・極力振動を与えない。
⇒チェックの際叩いたりしないでくさい。壊れます。
⇒マイクを落とすと壊れます。マイクスタンドのねじがしっかりとしまっているかどうかの確認を忘れないでください。
・湿気には気をつける。
⇒音質が変わってしまいます。
⇒保管方法はデジケーターという湿度を管理できるケースにしまうか、ジップロックの中にシリカゲルと一緒に保管するのがおすすめです。
・SM58と違い、直接手でもって録音はしません。
⇒繊細なので、ハンドリングのノイズがかなり入ります。それゆえ、ショックマウントで使います。
・繋ぎ方と片付けかたは必ず守ってください。
⇒電圧をかけている関係で、いきなり抜いたりすると壊れます。
以上です。
ちょっとややこしいかもしれませんが
振動に弱いこと
接続に順番があるということ
を理解すれば、すごく簡単だと思います!
ではでは!
※旧マスログ(old.masslog.jp)からの紹介記事です。
]]>
何処にマイクを立てるのが正解ですか?と聞かれることがありますが、それは録音したい音によって全く違った答えになります。そのため、マイクを立てるためには、「どういった音で録音をしたいか?」のイメージをハッキリ持っておくことが大切です。
では、具体的に録音する音のイメージを持つということは、何を意味しているかを考えていきましょう。よく「音楽的」という言葉が使われますが、人によってどのように音を受取りイメージしているのか、どんな音に魅力を感じているのかは全く違います。
3つのステップをご紹介するので、「この音がいい!」と感じる音で録音をしていく足がかりをつくっていきましょう。
マイクはその場に鳴っている音が録音されるので、実際にその場に鳴っている音を聞いて判断をしてみないとなかなか判断が難しいものです。
楽器の音を出してもらって前後、左右、近遠、高低をウロウロとしてみることが大切です。その場所で楽器の音を鳴らしたときに、どういった音を録ることができるのか選択肢を予め知っておくようにすると、判断をすることができるようになります。
選択肢の中で、どの音をメインに持っていきたいかを考えていきます。そのときに注意をしておきたいことは、いきなりどの音がベストかを決めるのではなくて、あくまでも比較をして考えるようにするということです。
・近い音に比べて遠い音はどちらが良いのか。
・高い場所で聞く音と低い場所で聞く音のどちらが良いのか。
といったように、単純な二者択一にしてしまえばぐっと音を決めやすくなります。
もし、その状況でどの音が必要か選べないときは、どちらの音も必要だということです。回線数を確認しながら臨機応変にマイクを増やしていきましょう。
メインに持っていきたい音が鳴っている位置が分かると、大体のマイクを置く場所が決まります。さらにそこから音を聞いて調整を加えて行きましょう。
ここではメインの目標はクリアーをしているので、そこからさらに足したい要素に注目をしながら、マイクの場所を調整していきます。
例えば、
・もう少しこの音色をブライト/ダークにしたい
・もう少しこの楽器のこの部分をハッキリさせたい
といったところの追い込みをしていきます。
さらに慣れてくると、その楽器が楽曲に対してどういった位置づけにあるのかを考えながらマイクのセッティングができるようになるようになります。
・この楽器はリードメロディーを弾いているから、アタックがある音が良い
→メロディーが一番ハッキリ聞こえる場所にマイクを置こう
・この音は遠くに置きたい音だから、鳴っている音の雰囲気を録音しておきたい
→その場所の音の響きがよく聞こえる遠い場所にマイクを置こう
といった調子です。
単純にして、まとめてみると、
「どういうことが出来るかを知る」
「一番優先したいことを比較して決める」
「微調整をして音の傾向を決める」
ということになります。
この方法を使えば、初めての場所や経験したこと無い楽器であったとしても、失敗をせずにレコーディングを進めることができるはずです。
もちろん、立てるマイクの種類やマイクプリアンプの種類を知ることも大切ですが、マイクの位置は一番レコーディングの音が変わる要素です。
セオリーとされている方法に盲目的に従うのではなく、自分の耳とセンスを信じるようにすることで、自分の好きなやり方を確立していくことができるようになるので、試行錯誤することを忘れずないようにすることが大切です。
マイクの位置を決めた後は、しっかりとマイクスタンドの固定具が締まっているかを確認するようにしましょう。しっかりと固定をされていないとマイクの自重でマイクが動いてしまい、セッティングをし直すことになってしまいます。
固定具を掴んで締めた後に、もう一度締めるクセをつけるようにしましょう。
マルチマイクで録音したものの位相については、音を聞きながら最初に調整をしておくようにしましょう。位相を整えると聞こえ方がガラッと変わるので、無理なEQやコンプレッサーなどを使わずに済むからです。
では、位相ってなんでしょうか?また位相がずれてしまうとどのような問題が起きてしまうのでしょうか?
少し難しい話にはなりますが、簡単に言うと「音がボヤけてしまうので、対策をしておきましょう」というお話です。ただ、どうしてそうなるのかを知っておくと、音に対する理解が深まり、レコーディングでもミックスでも視野が広がっていくように思います。
位相はいろいろな意味合いで使われるので難しい言葉の一つです。が、ここでいう位相は、波形にしたときの周期の位置(=タイミング)のことを意味しています。
その意味を理解するためには、まずは波形について理解する必要があります。
波形というのは、音を周波数で表したときにどのぐらいの回数の音の振動があったかを示しています。
例えば100HZサイン波の音というのは、1秒間に100回の波形を繰り返しています。そのことを図で表そうとしたのが波形です。
縦軸が音の大きさ、横軸が時間を表しています。
音が大きいほど波形の高さが大きくなり、音が高いほどこの周期が短くなっていきます。この上にいって下にいく動きで1周期とします。
この波形をみたときに、現在どこの位置にあるのか?というのが位相です。
位相は周期に対して角度で表します。
半周期を180度、1周期分を360度といった形で表現します。
例えば別々のタイミングで同じ高さのものを鳴らすと、同じタイミングで同じ同じ高さのものを鳴らしたときと比べて音が小さく聞こえてしまいます。
(同時の場合とそうでない場合)
これは、波形がずれていることで、音が打ち消し合ってしまい、本来なら大きく聞こえていた部分が聞こえにくくなってしまっていることを表しています。
実際の音は単純なサイン波ではないので、もっと複雑ですが、同時に同じような音がなっているときに、位相(タイミング)がずれていると、音がボヤケてしまうのです。
位相を整えるためには、波形のタイミングを調整していく必要があります。そのためにはまず波形を大きく拡大をしてみましょう。
ここから、一番ハッキリと聞こえて欲しい音を基準に波形のタイミングを合わせていきます。
例)ドラムをマルチマイクしたときに、スネアの抜けを良くしたい場合
スネアの上下の波形のタイミングを合わせる
↓
オーバーヘッドの波形とスネアの波形のタイミングを合わせる
↓
他、タム類、キック類の波形を合わせる
例えば、こういった波形のズレがあったときには、
このように調整していきます。
といった具合です。実際にレコーディングされている音は狙っているパーツだけではなくて、別の音のカブリも入っているので、なるべく手前に出したいパーツを最初の基準に選ぶようにするとうまくいきやすいです。
音の聞こえ方に影響をしてくる部分なので、目で合わせて、音を確認して、好みのタイミングを模索していきます。
位相を合わせる時に何を基準にするか?というところが、話の焦点になってきます。が、基本的にはまずオンマイクを合わせて、次にオフマイクを合わせることをお勧めします。
というのも、オンマイクのマルチマイキングについては、距離が近いため、波形を打ち消しあってしまいやすいのに対して、オフマイクの音に関してはそもそも遠い距離の音をレコーディングしているので、耳で音楽な判断をする必要が出てきます。
一般的には位相があっていれば、前に出てくる音、位相がずれていればボヤけた音になると言われています。
ただ、オフマイクについていえば、ステレオ感や広がり感を足すためにレコーディングすることが多いので、必ずしも位相を合わせることが正しいとは限らないのが、実際です。
そのため、まずやらなくてはいけないのがオンマイク、次に耳で聞きながら判断するのがオフマイクだと覚えておくと良いでしょう。
SoundRadix Auto Align
最近ではこういった作業を自動化するプラグインも発売されています。たくさんの位相を合わせないといけないときや、ライブレコーディングなどでどのマイクにもカブリが入ってしまっているときに便利なのが、SoundRadix社のAuto Alignです。僕もレコーディングスタジオ外での録音のときには愛用をしていて、助けられたことが何度もあります。
基準にしたい音をSENDで送り、合わせたい音をRECVで受けてDETECTボタンを押すだけで、機械的に位相を整えてくれます。
もちろん、耳で判断をすることは大切で、常にこのプラグインが正解を出してくれるとは限らないのですがスタートポイントとして設定する分には非常に便利です。
自分で位相を揃えてみたけれどうまくいかない場合や、波形で基準をうまく追えないときにはこういったツールに頼ってみると解決できることもあります。
Melda Production Mauto Align
これも、同じようなプラグインですが、より使い勝手が簡単なものになるかと思います。
グループを組んでアナライズボタンを押すだけで自動的にディレイを挟んだり、位相反転をしてくれるのでセッティングが非常に楽です。
ただ、ぴったり合わせようとしすぎて音色が変わってしまうことも経験上あるので、どの位相をぴったり合わせるといいのかを意識した使いこなしが必要になってきます。
・位相とは同時に鳴らした音のタイミングのズレのことです。
・一番ハッキリと聞こえて欲しい音を基準に波形をずらして音を調整します。
・レコーディングのときに位相がしっかり整うようにマルチマイキングをしておくことがいい結果に繋がります。