今回のコラムはお便りにお答えするということで、ですます調でおおくりします笑
先日、TWのDMでこんなメッセージをいただきました。
突然のDM失礼いたします。 以前のツイートで少しサチュレーションについてつぶやいていたのを拝見したのですが ご迷惑でなければサチュレーション系のプラグインについて教えて頂きたいです。 ミックスの完成図がはっきりイメージ出来ない技術レベルでは、サチュレーションのプラグインはむやみにトラックに刺さないほうがいいんじゃないかと迷っているんですが、 プロのエンジニアの方がこういったプラグインを使うときって、明確にここの倍音が足りてないから使おう!という感覚で目的がはっきりしているときにピンポイントで使う感じになるんでしょうか? ご教授頂けると幸いです。
ご質問いただき、ありがとうございます。
これはなかなか一言でお伝えするのが難しいお話なのですが、もしかしたら場合分けをすることで簡単になるかもしれない、ということでお話をさせていただきます。
Contents
サチュレーションを使うシーンは最初か最後のことが多い
サチュレーションに手が伸びる時ってどんなときだろう。
こう自問自答してみると、2つのパターンがあります。
・そもそもの音色に歪みが欲しいパターンの場合
これが最初にサチュレーションを使うパターンです。
アレンジを含めた意味での、大きな音色作りが必要なときには、歪みを足してみることが多いです。
また、頂いた素材のレンジが足りないケースの場合も、最初にインサートすることが良くあります。歪みを足すことで倍音が付加されてレンジが広げるという意図ですね。
この場合は、音色として歪んでしまうのはデメリットになるので、さり気なくということが多いように思います。
・ミックスの調整としてのサチュレーション
続いて、サチュレーションを使うシーンで多いのは、ミックスの最後の方になった時に位置を調整する時、が多いです。
この時には、しっかりとボリュームとパンでバランスが取れていて、空間系のオグジュアリーをいじりながらということが多いように思います。
ここで狙うのは、音色として、だとか、レンジとしてではなく、ミックスの相対的な位置を表現するためにサチュレーションを使います。
つまり、パンとフェーダー、空間だけでは要素が足りないときに歪ませることを選択肢に入れる、というイメージです。
この事を説明するためには、次の事を考えないといけません。
サチュレーションや歪みがもたらすオーディオ的な効果について
サチュレーションがかかるというのはどういうことか、簡単に考えてみましょう。
サチュレーション=入力過多で大きい音が表現できずに歪むということです。
ということは、小さい音は大きくなり、大きい音は歪みという形で表現されます。
ダイナミックレンジが狭くなり、小さな音がはっきり聞こえる一方で、大きな音が歪んでいきます。歪んでいくにつれて倍音が付加されてレンジが広がります。そして、段々と音が飽和をしていく。トランジェンドは歪むことで柔らかくなっていきます。
僕なりに表現すると、これが、サチュレーションがかかった状態、ということになります。
で、この状態をあえて作り出すことによって、
・クリーンな音に比べてより近い音や近く設置しても耳に痛くない音を作り出す
・うまく遠くに置けない音のトランジェンドを自然に削る
・レンジが狭い音のレンジを広げることができる
といったことができます。
本当はもっと色々なことができるのですが、パッと思いつくのはこの辺りでしょうか。
1176が今でもエンジニアの中で定番として使われているのは、トランジェンドを制御しながらちょうどよく歪みを加えられるからだと僕は考えています。
歪む塩梅がちょうど良い、ということなんでしょうね。
アウトボードと歪み
レコーディングエンジニアやマスタリングエンジニアがどうしてアウトボードをやたらと持っているかというと、やはり歪みを丁寧に扱いたいというところが大きいように思います。
このアウトボードではこういう種類のサチュレーションや歪みになるという直感に似たデーターベースを、経験を通じてたくさん持っているわけです。
少し想像をしてみていただきたいのですが、
ポップスのストリングスがうまく抜けてこない、でもEQだと何かが違って。優しい音色のままもう少し上に定位をさせたいときにどういうアウトボードやプラグインを選びますか?
こういう微妙なシチュエーションのときに、さっといくつかパターンが思い浮かぶようになると、ミキシングエンジニアとして腕が磨かれてきた証拠だと思います。
そうなるためには、まずは定番の音を知った上で定番から外れることが大切なのかな、なんて考えてます。そこについては、あんまり僕も偉そうなこと言えませんけどね笑
歪みを言語化するクセをつけてみること
同じ機材でも評価が真っ二つに分かれることがあります。
特徴的なサチュレーションを持った機材というのは往往にしてそんな傾向が強いと思います。
プラグイン、アウトボードに限らず、引き出しを増やそうとしたときに、音を通したときにどういう音の変化があったのかバイパススイッチのオンオフをして言語化して説明するクセをつけるようにすると、理解が早まるように個人的には感じています。
カラッとした歪み、ウェットな歪み、ジューシーな歪み、ダークな歪み・・・
同じ歪みでも色々種類があるわけです。
ご質問についての僕なりの答え
判断の段階を切り分けるようにすると、迷わなくなると思います。
まずは、「そもそもの音色に歪みが必要かどうか?」を考えてみて必要なら特にためらう理由はありません。
どんどん使っていくと良いと思います。ただし、とりあえずよくわからないから歪ませるジャッジをしてしまうと、ミックスが飽和をしてしまうので、注意が必要です。
自信が持てないうちは、まずはパンとフェーダーでバランスとってみて、近くならない音だったり、トランジェンドが目立って遠くに置けない音にかけてみることをオススメします。
明確にここの倍音が足りない、という認識については、個人的にはあまりありません笑。
使うのはピンポイントですが、どこの倍音が足りないからーというよりはこういうニュアンスを出したいからというところが強いように思います。
ご質問いただき、ありがとうございました!
もし、他にも気になっていることや知りたいことがあればお気軽にDMやコメントをいただければ幸いです!
こんな感じの大喜利スタイルでできる範囲、わかる範囲でお答えしていければと思います 笑
また、おいおいそれは違うんじゃないの?といったご意見も大歓迎です。
一緒にディスカッションしていきましょう!
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