初心者を抜けて、数をこなして中級者になってくると、だんだんとマイクプリアンプの違いが気になってくる人が多いんじゃないでしょうか。 

1万円のものから80万円のものまで、値段に大きな振れ幅のあるマイクプリアンプ。一体何がそんなに違うのか。どうやって選べば良いのか。 

その特徴について解説をしていきたいと思います。 

 

マイクプリアンプとは? 

マイクプリアンプは、マイクの信号を増幅するための機械です。 

増幅幅は20dbで10倍、60dbで1000倍にもなります。 

ここにこだわる人が多いのは、マイクプリアンプはマイクの種類の次に音を決めるための大きな要素だからです。 

 

マイクプリアンプの接続方法について 

意外とクリエイターの方に聞かれることが多いのが、マイクプリアンプの接続方法です。マイクプリアンプは大抵、XLR端子がアウトプットになっていますが、そのままインターフェイスのXLR端子に繋いでしまうと、マイクプリアンプを二重に通すことになってしまいます。 

ある程度の価格帯から、内臓のマイクプリアンプをOFFにすることができたり、XLRをラインレベルで受けることができるようになるのですが、10万円以下の価格帯の場合はXLR→TRSのケーブルで接続する必要があります。 

外付けのマイクプリアンプを買ったけれど、 

「何故か音割れしてしまう」 

「内臓マイクプリアンプの方が音がいい」 

と感じる場合には、接続方法を見直してみるとよいでしょう。 

 

マイクプリアンプの出力レベルについて 

ときどき、精一杯マイクプリアンプでブーストをしている人をみかけますが、現代の24bitデジタルレコーディングでは、そこまでゲインもレベルも無理にあげる必要はありません。まずは過大入力で歪まない音にセットすることが基本になります。その上で、エフェクター的にマイクプリアンプを使いたい場合のみ、ゲインをあげ、出力レベルを下げて、マイクプリアンプをドライブさせてみましょう。 

だいたいの適正音量は-20dbから大きくても-12db程度だと考えています。 

このレベルであれば、後で別のアナログエフェクターを通すときにも問題ない音量の大きさだからです。 

 

マイクプリアンプの違いとオススメの見分け方 

マイクプリアンプの違いについて聴き分けるためには、実際に自分で試してみるほかありません。 

 

友達を連れて行って、自分の普段使っているマイクとオーディオインターフェースを持って楽器屋に行ってみるのが一番良いと思います。 

演奏してもらってる間に同じマイクで違いを聴き比べたり、実際に録音をしてみて違いを一緒に確認してもらったりできるからです。 

どうしても、自分の買い物となると価格が先入観として刷り込まれてしまいますが、実際に録音したものを友人に前情報を一切伏せて選んでもらうと意外な結果に終わることも多いかもしれません。 

 

同じ演奏、同じマイクで、マイクプリアンプだけを切り変えてみると、ニュアンスがガラッと変わるのが確認できます。 

 

例えるなら、 

カメラ本体がマイク。写真のフィルムがマイクプリアンプといった具合でしょうか。 

フィルムにこだわることで、質感をコントロールできるところに面白さがあるのです。 

どのメーカーが優れているというよりは、殆ど好みの問題なので、これだ!と感じたモノを愛用する方が、周りの評判に左右されるよりも納得する仕上がりになりやすいと思います。 

 

とはいえ、何も例がないとわかりにくいと思いますので、僕が感じた使ったことのあるマイクプリアンプの特徴を書いておきます。

セルフレコーディングで機材をレンタルするときやレコーディングをするときに参考にしていただければ嬉しいです。 

何より、ご自身で違いを体感してみてください。 

 

Neve系全般 

年代や状態よってサウンドが大きく変わりますが、基本的には腰の据わった音が特徴的です。どの楽器を録音してもウルサイ音にはならないので、ファーストチョイスになることが多いプリアンプです。オーディオインターフェースに付属しているマイクプリアンプはHifi傾向が強いので、比べると温かさを感じるかもしれません。 

リイシューものやビンテージものなど様々ありますが、同じ音を目指しているはずなのにまるで傾向が違ったりもします笑

API系全般 

ローからハイまでスッキリ、クッキリと音を録ることができるマイクプリアンプです。カラッとした清涼感のあるサウンドが特徴的で、張り付き感のある派手な音です。激しい音をうまくデフォルメをしてくれるような感覚があります。日本だと過小評価をされていますが、海外ではNeveと同じようにファーストチョイスになることが多いマイクプリアンプです。 

 

Universal Audio 610(真空管マイクプリアンプ) 

明るめで、芯のある音を録ることができるマイクプリアンプ。サックスやボーカルなど主役になる音源に使うことで、無理にEQをしなくてもどっしりと中央にいてくれるような音を録ることができます。価格帯もそこまで高くはないので、初めて買う歌録り用のマイクプリアンプとしてはオススメです。真空管特有のブライトさがありますね。

Forcusrite ISA one 

クリーンな音を持っているマイクプリアンプ。インターフェイスについているマイクプリアンプで音が曇って聞こえてしまうときには、こちらに変えると、劇的な変化を体感できるかもしれません。音の細部まで録音できるので、どのソースであってもとりあえず使うことができると思います。お値段もお手頃ですし、最初に買ってみるモノとしてはオススメです。 

Avalon VT737SP(真空管マイクプリアンプ) 

艶のあるクリーンな音が特徴的で、ミックス時にぐっと前に出てくる音で録音をすることができます。高級感のある音や、上品さを演出したいときに使うとうまくイメージに合うことが多いです。音を聞いてみると、JPOPのあの音だ!とピンとくるのではないかと思います。EQもコンプもついていて非常に使いやすいです。 

MetricHalo ULN-2 

これ自体はインターフェイスですが、高品質なマイクプリアンプを搭載していて、モバイルレコーディングで重宝をしています。NeveやAPIのような色付けは感じられないもののしっかりとしたガッツがあります。大きな荷物を持ち運べないときに単体機と大きく差がないクオリティーのものをレコーディングできるので、インターフェイスから探している方にはオススメできます。 

 

上記はあくまでも一例ではありますが、このようにメーカーや機種によって大きく特徴が異なります。 

 

マイクプリアンプを選ぶ考え方について 

具体例をいくつか挙げておきます。 

 

ガツンとくるようなロックギターを録音したい→ギラッとした張り付き感のある音がいいかな→APIのキャラクターが合いそうだ 

歌と溶け込んでいくようなアコースティックギターを録音したい→歌の邪魔をしないまろやかな音がいいかな→Neveで柔らかい音を録音しておこう  

激しいオケに負けないボーカルを録音したい→ボーカルを抜けさせるならクリーンな音がいいかな→ISA oneでクリアにとっておこう 

 

といった具合で現場に合わせて判断しています。 

 

マイクプリアンプについてのまとめ 

影響力でいえば、 

演奏>マイクを置く場所>マイクの種類>マイクプリアンプ>インタフェース 

なので、最初からこだわりすぎる必要はありません。 

 

押さえておきたいポイントは 

・味付けのバリエーションとしてマイクプリアンプがあること。 

・スキルアップをしたときに無視できない要素であること。 

の2点です。 

これさえ理解しておくようにすれば、後々大きな手助けになるはずです。 

「演奏も非常に良いし、しっかりとした音が良くレコーディングできていると思う。でも、何かが足りない気がする……。」 

そう感じたときには、マイクプリアンプを変えてみることで、大きな変化を楽しむことができるでしょう。