用意した設計図を確認しながらバスフェーダーなどを使わず、それぞれ個別のパンとフェーダーだけでバランスを取ってみましょう。
ここで作ったバランスはいわば、ミックスの下書きになります。
絵の場合はうまく下書きがかければ、あとはなぞるだけで作品が出来上っていきますが、それはミックスでも同じこと。
何もエフェクトを使わないシンプルな状態で良いバランスづくりができれば、それだけ仕上がりも良くなっていきます。
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必要なボリュームはその場で書いていく
シンプルにパンとフェーダーだけでバランスをとろうとすると、場所によっては小さすぎたり大きすぎたりする場所がでてきてしまいます。
そんなときには二通り対処方法があります。当たり前のようにやっていることかとは思いますが、ここでは改めてその方法をおさらいしておきましょう。
・イベントのゲインを調整する
イベントを切り分けて、ゲインでそもそもの音量を調整する方法です。これは気軽に作業を進めていくことができ、チャンネルも増えないのがメリットです。ただ、一方ではフェーダー前のゲインで調整をしてしまうので、同じエフェクトを掛けていてもかかり方が変わってしまいます。
・フェーダーでオートメーションを書く
これは最もフレキシブルに調整をすることができる方法です。エフェクトのかけ方を一定にしながら、フェーダーでバランスをとっていくことができます。その場その場での音量を調整していくことで、音量の変化をフェーダーで書いていくということです。
ただし、他のパートの音色や音量が変わってしまうと調整をし直す必要がでてきます。
なので、最初にどの音に対して、どう聞かせたいかを設計図をみながら設定していくことが大切です。
例:キックに対してベースが手前など
この二つを組み合わせて、その場の判断で大きい、あるいは小さいと感じたものを調整してみましょう。
大まかな使い分けのポイントとしては、
・そのパート、あるいはシーン丸ごとのざっくりとした音量感→ゲインでの調整
・細かい調整が必要な部分→フェーダーのオートメーション
で対応をすると、煩雑にならない範囲でバランスをとっていくことができるように感じています。
ミックスバスを組み込む前に、全体の音量を調整する
ある程度バランスをとった後は、全体のミックスのボリュームを調整していきます。
マスターフェーダーを除くチャンネルをすべて選択して、フェーダーをまとめて調整をして、全体の音量を調整していきましょう。
目安としては、マスターフェーダーの音量が-12から-8DBFSあたりの音量バランスを目指すとよいでしょう。
もしVUメーターのプラグインや機能があるDAWを使っていれば、マスターチャンネルに-12DBにキャリブレーションしたVUメーターを利用して、大体針が0VUを行ったりきたりする程度にすると丁度いい音量感でしあげることができるはずです。
音量が小さいと感じたら、モニタースピーカーの音量を上げる
このぐらいの音量感だと、普段聞いているCDや音源の音量と比べると小さい音に感じるはずです。音量が小さすぎると感じた時には、DAWのフェーダーを上げるのではなくて、スピーカーの音量のほうを大きくしていくようにしましょう。そうしておけば、過剰にエフェクターを使うことを防ぐことができるのです。
楽器ごとにミックスバスを組む
ミックス全体の音量を調整した後に、楽器ごとにミックスバスを組んでいきましょう。バスは複数のチャンネルをまとめて一つのチャンネルにする機能のことです。
この機能を使って、楽器ごとにミックスバスを組んでおくことで、楽器にまとめてエフェクトをかけたり、ボリュームを調整したりすることができます。
特に、ドラムやコーラス、ピアノのような複数のチャンネルがたくさんあるようなパートについては、あらかじめバスにまとめておくようにしましょう。
この段階では、まだ先にバスをまとめておくというだけで、エフェクトやミックスバスのフェーダーを触る必要はありません。あくまでもミックスの下準備としてまとめておくといった意味合いです。
下準備としてのミックスの完成系
おおむねここまで出来ていれば、下書きとしてのミックスは完成しているといえるポイントを書いておきます。ぜひ、参考にしてみてください。
・エフェクトを使わなくても音楽として成立している
・埋もれてしまって聞こえないパートが無い
・全体を通じてマスターチャンネルがクリッピングをすることが無い(0DBFSを超えていない)
心得チェックポイント
・音量が小さいと感じたときは、モニタースピーカーの音量を上げるようにしましょう。
・パンとフェーダーだけで、完成系がイメージできれば下書きとしてはOKです。
・全体の音量はミックスバスを組み込む前に調整しましょう。組み込んだ後にフェーダー全体を下げると、ミックスバランスが大きく変わってしまいます。